AURALEE(オーラリー)とはどういうブランド?
なぜ人気があるの?どのように差別化しているのか?
意外と知られていないブランドの成り立ちを知るとブランドの特徴が見えてきます。
今回は大注目ブランドAURALEE(オーラリー)に関して、ブランドの成り立ち、コレクション、使用素材の特徴をファッション関係者でも知らないマニアックなレベルで解説致します。
途中少し原料など難しい内容も出てきますが、マニアでも知らない内容かと思いますので知っているだけで尊敬されるレベルだと思います。
この記事の信頼性
筆者は20年テキスタイル業界勤務し海外著名ブランドへのテキスタイル企画、開発、販売してまいりました。その知識を活かして、一般には伝わりにくい生地の特性やブランドの裏側を解説してまいります。よくあるブランド解説記事は生地の原料などの解説が乏しく、浅く感じましたので原料から企画してきた知識と海外ブランドと仕事をしてきた知識を活かして解説致します。
AURALEE(オーラリー)とは?ブランドの成り立ち
デザイナー岩井良太が2015年に始めたブランドです。
岩井良太は文化服装学院の夜間コースでデザインを学び、その後「フィルメランジ」や「ノリコイケ」といった素材にこだわったブランドでキャリアを積むことにより、日本の生地地と深いパイプを持つようになりました。
2015年ブランドスタートしますが、その際クリップクロップという生地企画会社の小林広文社長に後押しされスタートしています。
今は株式会社オーラリーとなっていますが、もともと生地会社であるクリップクロップが始めたブランドということです。
初期は主にセレクトである、UA(ユナイテッドアローズ)、EDICICE(エディフィス)、1LDKへの卸売り中心でした。そこでその素材の特性と普遍的でありながらトレンドと機能性を合わせたデザインが評判を呼びました。
特に1年目はニットの産地である和歌山産のカットソー、ニットのトップスでした。
2年目は綿素材の生産で有名な浜松山地のシャツ地を使ったシャツ素材などで評判を高めて、アイテム数を増やして行きます。
2017年に南青山に直営店をオープンします。すでにセレクト経由でファンを増やしていたこともあり、すべてのアイテムが見られ、世界観がより伝わる直営店は多くの来客を呼び込み、ブランド規模も大きくなっていきます。
2019年にはパリコレに参加し、これまで展示会のみの参加であったパリでコレクションを行うことにより、海外のプレスにも大きくその存在を知らせることとなります。
2020年、現在ではONLINE SHOPも構築し、自社サイトでのEC販売も行っております。ファンの数、認知度供に増えており、要注目のブランドとなっています。
AURALEE(オーラリー)とは?コレクション特徴
AURALEEのコレクションの特徴はその使用素材の差別化によるところが大きいです。
日本のアパレルは通常使用する生地の単価を上げてしまうと、自分たちの利益が減るため極力生地の原価率を下げ、コレクションを組みます。
そして、セレクトなど多くの規模の大きい業態では一定の売上目標を達成しなければいけないため、出来るだけ店頭で今売れているものの流れを汲んだもの作りをしようとします。
そのため大規模ブランドになればなるほど生地から開発しないことが当たり前で、市中にある現物と呼ばれる生地問屋が在庫している生地を使ってコレクションを作ります。
そのため、店頭では違うセレクトショップなのに同じような生地の同じようなものが店頭にある状態となってしまいます。
この現状が、今セレクト業態が調子の悪い根本原因だと思います。百貨店アパレルはもうほぼ死に絶えていますが、次に続くのは売れるものを作ろうとして素材開発していないセレクト業態だと確信しています。
AURALEEは逆に素材開発からコレクションを組んでいるため、上述のセレクト業態と全く逆の方向に進んでおり、それが差別化となっています。
これが出来る要因としてデザイナーの力もそうですが、ブランドの発足時のバックが差別化生地を扱う生地会社であり、まだ売上の立っていないブランドに対して投資をして素材からブランドを作っていったところが大きいと思います。
コレクション特徴 現在販売アイテム毎解説 1、シャツ
37400円(tax in)
Super140’s原料の超極細ウールを多色に染め分けて、しっかりと打ち込んて?織り上げたチェック生地です。
https://auralee.jp/
ウォッシャブル加工を施すことでシワになりにくく、自宅で洗濯可能な素材に仕上げました。
独特のぬめり、光沢感、上質な落ち感が特徴です。
WEBにはこのように説明がありますが、これを読んで理解できる人もなかなか多くは無いと思いますので解説致します。
ポイントはSUPER140s、多色に染め分けて、しっかりと打ち込んで、ウォッシャブル加工
という文言かと思います。
Super140’s
これはウールの繊維の細さを表す単位です。スーパー140と読みます。要は羊毛の繊維が細ければ細いほど品質が良いもので生地の肌触りや光沢感が変わってきます。
SUPER | ミクロン |
SUPER80’s | 19.5ミクロン |
SUPER90’s | 19.0ミクロン |
SUPER100’s | 18.5ミクロン |
SUPER110’s | 18.0ミクロン |
SUPER120’s | 17.5ミクロン |
SUPER130’s | 17.0ミクロン |
SUPER140’s | 16.5ミクロン |
SUPER150’s | 16.0ミクロン |
SUPER160’s | 15.5ミクロン |
SUPER170’s | 15.0ミクロン |
SUPER180’s | 14.5ミクロン |
SUPER190’s | 14.0ミクロン |
SUPER200’s | 13.5ミクロン |
SUPER210’s | 13.0ミクロン |
ミクロン数が低ければ低いほどその繊維が細いということです。
さて、SUPER140‘sがどれだけ細いかというと、カシミアの繊維の細さが14~16マイクロンですので一部のカシミアより細いウールであるということになります。
多色に染め分けて
これは織る前に糸を染め上げてから織布、仕上げする先染め織物だということが分かります。柄もチェックとなっているので経糸と緯糸で配列で色を変えていることが分かると思います。
しっかりと打ち込んで
生地の打ち込みの密度が高い織物だということです。
上述の先染め生地の特徴として、織ってから染色する後染め生地よりも高密度の織物が出来るという特徴があります。それはなぜかというと、先染め織物の場合その後染色加工する必要が無いため、染料の浸透性を気にする必要がないことと染色加工時に発生する縮みによる生地バランスの変化を気にする必要がないからです。よって、先染め織物であるからこそできる高密度ということになります。
ウォッシャブル加工
ウールの生地をウォッシャブルにするにはオフスケール加工と呼ばれる加工をする必要があります。
ウールは顕微鏡でみるとスケールと呼ばれるうろこ状のもので表面を覆われています
これはウールが生き物からとれたものであり、優れた作用として
1、水、油を弾く。
2、湿度を取り入れ、放出する調整作用がる。
3、保温機能がある。
と言った特徴があります。このため登山家などに話を聞くと、日中汗をかき、夜は氷点下となる極限の登山条件で好まれるインナーはウール100%のインナーであると言います。これは他の繊維に比べて汗を吸ってもすぐ放出し、保温機能が高いためです。
さてオフスケール加工はこの表面のスケールを薬剤で溶かしてウールが水分を吸収しなくする加工ということです。これにより、洗濯時の縮み率が制限出来るのでウォッシャブルな製品として使用することが出来ます。
原価分析
37400円(税込み)の金額ですが自分の経験上、生地値 恐らく3500円/mts ほどで製品用尺2.5mts とすると生地代8750円+縫製代1800円/pc +付属代500円 にて原価で11000円くらいはかかっているではないかと思います。原価率は35-40%場合によっては50%のものもあるかもしれません。これにデザイン代、店舗、スタッフ維持費、広告費が載ってくるので、海外ブランドに比べて原価率は非常に高いと言えると思います。
コレクション特徴 現在販売アイテム毎解説 2、T-シャツ
24200円(tax in)
上質なエジプト綿のギザコットンをハイゲージで編み立てたシルクのような表地に中綿が入ったパーカーです。
https://auralee.jp/ap/item/i/A0AU0000J8KW
軽くボリュームがありながら上品な素材が特徴です。
中綿入りワイドシルエットTシャツ
こちらの特徴は
エジプト綿のギザコットン
ハイゲージ
中綿が入った
というところです
エジプト綿のギザコットン
エジプトの超長綿GIZAを使用しています。
エジプトナイル川西沿岸の一部でのみ栽培可能な品種であり非常に希少性の高い超長綿。軽く、しなやかで光沢感が強いことが特徴です。
コットン品種&超長綿に関しては下記にまとめていますのでご参照ください。
ハイゲージ
編みの密度はゲージで表します。
1インチ(2.54cm)の中に何本針が入っているかで表します。
12本以上はハイゲージ 7-10本はミドルゲージ 1-5本はローゲージと呼ばれます。
中綿が入った
これはよくAURELEEがやる、T-シャツ地を2重に縫製したものに中に薄い中綿を入れて保温性を持たしているのだと思います。中綿がポリエステルなのか、綿の中綿なのか書いていませんが、重さを考えるとポリエステルなのかなと思います。
原価分析
24200円(TAX IN)の価格ですが、恐らく生地が30ゲージのGIZA100の天竺で通常用尺1.5mtsのところ2重なので3mtsかかるとして、生地値1200円×3mts=3600円+縫製代1200円/pc +付属代700円=5500円/pc くらいなのかなと思います。
原価率25-30% という感じかと思います。
コレクション特徴 現在販売アイテム毎解説 3、コート
96800円(tax in)
上質なエジプト綿のフィンクスコットンとキュプラを高密度に織り上げたシャンブレー素材です。
https://auralee.jp/ap/item/i/A0AU0000J8KK
高い断熱保温効果を発揮する素材を内側に使用しました。
こちらは
フィンクスコットン
キュプラ
シャンブレー素材
が特徴と思います。
フィンクスコットン
ギザと同じくエジプト超長綿のブランドです。肥沃なナイル地方の超長綿(繊維長が30mm以上)ですべて手摘みの高級コットンです。
キュプラ
コットンリンターと呼ばれる綿花のコットンを回収した後に残る「がく」の部分を回収し、そこから繊維を作る再生繊維です。特徴としてシルクを目指して開発した繊維ですので、光沢と発色性がよく、よくスーツの裏地などによく使われる素材です。吸湿性、透湿性、静電気が発生しにくいなどの特徴があります。
デメリットとしては摩擦に弱く、よく白化します。また雨など水に弱い繊維ですのでアウターに使用して雨に濡れるとその部分だけシミになるウォータースポットと呼ばれる現状が起こることがありますので注意が必要です。
シャンブレー素材
経糸と緯糸の色が違うことにより、玉虫色に見えたり、色が深く見える素材です。この生地に使用しているのはタテ:綿×ヨコ:キュプラだと思いますのでどちらの繊維も反応染料で染めていると思います。よってこの生地は先染めですでに染めた糸を織っていると推測できます。綿×ナイロンなどでしたら2浴染めという手法で、反応染料で綿を染めて、酸性染料でナイロンを後染めで染めるという手法でシャンブレーを作ることも可能です。
原価分析
96800円(TAX IN)の価格ですが、恐らく生地値1700円×3.5mts=5950円+縫製代2000円/pc +付属代500円=8450円/pc くらいなのかなと思います。
原価率10-15% という感じかと思います。
以上今回はAURELEE に関して、ブランドの成り立ちとコレクションの特徴を素材の特徴含めて解説致しました。皆様の商品選別のお役に立てればと思います。
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